1.民間企業で行う手話通訳
―――弊社に登録していただく前からもずっと、手話通訳をされていたと思うのですが。
K先生:そうですね。37年ぐらい、手話を始めてからは40年ほどですね。試験(※)に受かって、地方公共団体から委託を受けているところへ登録してからは、依頼があって自分の都合が合えば、いろんな現場に入る、それが仕事ですね。
―――そのお仕事がずっとある中で、ありがたいことなのですが、弊社のような民間の速記会社に登録してくださったのは、どうしてでしょうか。
K先生:ちょうどSさん(※)とお知り合いになって、Sさんが会社の意向として通訳派遣をしたいということを聞いてね。その前に在宅の民間の派遣会社にも手話通訳というのが出ていたことがあったんですよね。それが、別に手話は日常会話でいいですとか書いてあってね、そこに。時給5,000円とかね。手話はあまりできないのに、時給5,000円って何か変でしょう。
―――変ですね。
K先生:ちょっと文句言いに行ったんですね、あそこに。やっぱり通訳というのは、そんな日常会話ぐらいじゃできないから。御存じないからね。やっぱりある程度技術を身につけた後でないと、情報保障ということになるのでね、聞こえない人にとっては。だから、資格のない方がお金につられて行って、何か間違いが起こったら危ないから。
―――そうですよね。
K先生:募集されるんだったら、資格のある方というのを条件に入れたほうがいいですよと言いに行ったんですよ、あそこに。そこが初めて私が所属している以外の会社やったんです。それしか知らなかったです。その後、Sさんにお会いして、民間で。
―――それは結構、最近のお話なんですね。
K先生:そうですね。でも、あそこへ行ったのは10年ぐらい前ですよ。
―――資格を持っている人をちゃんと募集したほうがいいですよというのは、受け入れられたんですか。
K先生:はい。その後、もうなかったですから、そういう募集は。1時間5,000円でみんな行くでしょう。
―――それは行きますよ、ちょっと勉強してね。
K先生:びっくりしてね。それからなくなりました。ほかのことはされてると思いますけどね。
―――もうその手話通訳業務の募集自体が、なくなったんですか。
K先生:なくなりましたね。
―――条件をつけたわけではなくてですか。
K先生:そうそう。ちょっと言ってしまったのでね(笑)
―――なるほど(笑)
―――すごい(笑)
―――じゃ、弊社が民間で初めてということですか。
K先生:初めてです。
―――ありがとうございます。
K先生:先ほども言ったけど、特定の団体が一手に引き受けているでしょう。そしたら、やっぱりひずみが出てきますよね。そこだけしかない、競争相手がいてないというのは。やっぱり何かいろんなことが、通訳者も不満がないわけではないと思うんですけど、正面切っては言えないんですけどね。そしたら、やっぱり民間でもちゃんとそういう仕事ができる場があれば、やっぱり向こうの待遇も変わってくると思うしね。そういうのは必要だとは思ってましたから。
(※)試験・・・手話通訳士の試験と広域的地方公共団体実施の試験
(※)Sさん・・・弊社社員の手話通訳者
(続きます)
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