6.落語などの言語表現の理解


―――高校のときの友達が両親が聞こえないで、友達が片耳だけで、弟はもうかなりぎりぎり聞こえるか聞こえないみたいな感じで。

 

K先生:難聴も重いほうで。

 

―――はい。で、その子のうちに行ったら、ピンポンとなったら光で。

 

K先生:そうそう。パトライトで、みんな光に変えるいうのありますよね。

 

―――はい、そうですね。親とはもういつも手話でしゃべってて、あまりやっぱり突っ込んで聞けなかったんですね。

 

K先生:ちょっと遠慮ありますもんね。

 

―――はい、そうですね。で、一応、知らない振りみたいなのをしてて、あんまり見ないでおこうと思って、そういう会話してるところとか。今、親がボランティアで働いているというのは聞いてて、西村知美さんがよくそういうボランティアを。

 

K先生:よくしてはったね。あの人手話で、テレビでやってはりましたね。

 

―――はい。よく呼んで一緒に仕事してるとかと聞いてて。Cさんという名前なんですけど、何かそういう名前聞いたことありますか、そういう方。

 

K先生:Cさんって落語家にいてない?

 

 ―――知らないですね。

 

K先生:落語家やってる人でCさんっていますけど、男の人。夫婦とも聞こえないんじゃないかな。

 

―――ろうの方で手話をやっていると。

 

K先生:ろうの方で手話落語やってる人、Cさん、いてるよ。

 

―――もう高校出てからは全然会ってないですけど、今になって気になるなと。ひょっとしたら彼もしてるのかなと少し思いまして。

 

K先生:そうですね。今頃、何か手話に関わるようなお仕事されているかもわかりませんね。落語家のCさんという人もいてはって、手話落語ってあるんです。

 

―――ずっと手話をしながら。

 

K先生:手話で小ばなししはるの。でも、それをオチとかあるでしょう。ああいうのが伝わらないんですよ。もう全然だから、言ったら悪いけど、前も手話落語できる方呼んで、着物に着替えてしてくれはったけど、誰も笑わないんですよ。何か状態を表すのは上手よ、食べ過ぎて何かなってとか。でも、何か物語、最後にオチとか、それがろうの人には全然伝わらない。

 

―――難しいんですか。

 

K先生:難しいです、言葉が分からないから。だから、一緒に笑えない。難しい。

 

―――もちろんお客さん皆さん、手話分かる方ですよね。

 

K先生:そうです。分かる人です。ろうの人も聞こえる人も、手話のわかる人がお客さんなんですけどね。難しいわ、なかなか。

 

―――内容だけ伝わったらいいわけじゃないですから、難しいですよね。

 

K先生:難しいです。

 

―――言葉の微妙なところで。

 

K先生:そんなところはできない。言葉遊びができない。

 

―――そういうところが面白かったりしますもんね。

 

K先生:そう。だから、状態を表すだけやね。何か失敗した状態とかをやっぱり身ぶりで表すの上手でしょう、落語家の方って。

 

―――そうですね。

 

K先生:食べるしぐさとか、そういうの。そういうのでは笑えるけども、文章になってきて、何かの最後のオチのところでは、肝腎のところで笑われへんから、オチなしとかね。

 

―――やっぱり例えば落語のされてる層は、例えば真打とか前座とかという層があるぐらいいてはるんですか。

 

K先生:いてますよ。割とプロもいてるんちゃうかな。桂福団治さんが病気で耳が聞こえなくおそれがあることで、手話をされて、聞こえる人で。それから、手話落語を始めて。それで聞こえない人を弟子に取って、プロの方がね。それから手話落語って始まったんです。

 

―――何とかオチが伝わる方法があればいいですけど。

 

K先生:そう。だから、ことわざとか比喩とかありますでしょう、日本語では。ああいうのが難しいです。

 

―――難しそうですね、たしかに。

 

K先生:何とか川柳とかあるでしょう。サラリーマン川柳とかありません?

 

―――はい、ありますね。

 

K先生:シルバー川柳とかね。ああいうのでもなかなか伝わらない。

 

―――そうなんですか。

 

K先生:伝わらない。

 

―――あのニュアンスを表現するのは。

 

K先生:無理です。表現も難しいから、例えばねというたとえ話でするとか。今日、奇跡という言葉が出たんですね。奇跡が起こるとかいうでしょう。

 

―――はい。

 

K先生:漢字も難しい。奇跡って何やとか言われたらね。

 

―――改めて言われると、確かに難しいですね。

 

K先生:何かちょっとね、うん。で、ちょっとしゃべってたら、もしかしたら、交通事故で死ぬかと思ってた人が元気やった。そんなときに奇跡起こるって言うんか言うから、そうやよ言うて。そんなときにも使われますよね。

 

―――はい。

 

K先生:奇跡的に助かったとか、何かそういうことがあるでしょう。

 

―――はい。

 

K先生:そういうことを日々やってます。楽しいですよ、でも、聞こえない人にわかってもらえるいうのが。

 

―――そういうような表現の工夫をし続けないといけないんですね。

 

K先生:そうですね、うん。だから、皆さんが思ってられる以上に分かってない人が多いんです、聞こえない人は。目の見えない人は、耳から情報が物すごい入ってきますでしょう。

 

―――はい。

 

K先生:だから、そのほうがよっぽどわかってはるんです。やっぱり何か耳聞こえないけど、目に見えてるし、体元気やから、何かどっちかと言ったら健康的かなと思われがちな面があるかもしれないですけども、そういう面でつらい面がありますね、理解が困難なことがあるという。

 

―――なるほど。

 

K先生:個人差はあるんですけどね。 

 

(続きます)

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