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日本語って

西都速記は音声を文字化する会社ですが、速く記すということを社名に入れている速記会社は多い。なら、その速度の目指す究極的な目標は、発せられた音声にどこまでも近づく速さで文字化するということではないだろうかと私は考える。

 

文字化といっても、現代の速記会社は反訳した文字を電子データ化することが必須なので、端末入力の場合、平仮名、片仮名、漢字、アルファベット、アラビア数字等への切替えや変換作業が必要である。

 

日本人は世界で唯一、表音文字と表語文字を両方扱う器用な人種だ。ちなみに鈴虫の音も人の声も右脳で処理する。器用な分だけ、入力時の語句変換回数は恐らく世界で一番多いだろう。

 

先日、中国の速記会社とオンラインで交流する機会があった。リアルタイム入力の速度を見させていただいたが、正直、圧倒的に速い。全て中国語だったので何が書かれているのか読めなかったが、変換作業が少なければあの速度感で打てるのか、と感心した。

 

ここから自動変換や音声認識技術の向上を!と話を膨らませていきたいところだが、春の気配がまだまだ感じられない、寒風吹きすさぶ窓の外を眺めながら日本茶をすすると、記憶は遠い昔へと遡る。

 

創業の頃、毎日夜食を社員と共にしながら、「リアルタイム入力の実現は、結局人間の思考のプログラム化へとつながると思うけど、その辺どう思う?」と私が質問し、翌日の夜にまた一緒に御飯を食べながら、社員がいろいろ調べたことを聞いたりいろんな議論もたくさんした。自然言語処理の話から形態素解析、正規表現、機械学習、パターン認識、ニューラルネットワーク、特異点等、いろいろ懐かしく思い出される。

僕らは電子工学研究科の研究員ではない。速記会社の人間だ。今できることは先端技術を活用しつつ、結局マンパワーを伸ばすことだとあのときに決めたんだから、この件はやはり未来への宿題にしておこうと思う。

 

未来、いつだろう。来世は御免でやんす。冬の腰痛に悩まされない南国に生まれて、笑顔とタキシードがまぶしい日本語が堪能なバーテンダーかホテルマンになっている予定なので。