7.災害時の問題
―――災害のときにも、よく普通の人と思われるというか。
K先生:そう。
―――逃げろって聞こえてると思って。
K先生:思って、何かじっとしてはるわと思ったら、全然聞こえてなかったとかね。
―――そうですね。難しいですよね、それは。
K先生:だから、東日本大震災でもたくさん、普通の人以上に聞こえない人が亡くなられたというのを書いてましたよ、昨日の新聞にも。やっぱり逃げ遅れるということがあるんですね。言ったって、聞こえないでしょう。
―――聞こえないですね。防災サイレンなんかも聞こえないですもんね。
K先生:全然わからない。
―――最近の地震があったときなんて、怖かったでしょうね。
K先生:怖かったやろうね。
―――耳が聞こえないというのは、物事の認識とかの部分での困ったことが多いんですか。
K先生:多いんです、思ってる以上に。
―――目が見えない方とかは、そこは比較的少ないんでしょうね。
K先生:そうですね。
―――多分、聞くというのは、そういうことなんでしょうね。
K先生:そうなんです。自然に私たちは、物すごくいっぱい入ってきてるんでしょうね、音がね。
―――そうですね。
K先生:それがない世界というのは、やっぱり思った以上に重い障害になるんですね。
―――そこはあんまり正直分かってなかったなという。
K先生:そうやと思います。
―――認識力とか、その辺は分からなかったですね。
K先生:手話やり出してわかったことですからね。私もそうやから、一緒ですよね。手話に関係しなかったら、一生分からんかったと思いますよ。
―――今でもしょっちゅう、全然無知やったわということいっぱいありますね。
K先生:ありますね。
―――一般の人からしたら、手話で会話されてる姿とか見たら、あ、そういうので言語、伝える手段があって成立してると、表面的にはそう理解しちゃうんですけど、実際にはニュアンスが伝わらないことがあると。
K先生:いっぱいありますね。ニュアンスは伝えるのが難しいですね。
―――そういう獲得言語のプロセスとかも全然違うというか、得られない部分があるというのが、我々は全然分かんないですね。
K先生:そうですね。それから、両親が聞こえない。そこに生まれた聞こえる子供とか。逆があるでしょう。また子供が聞こえないで、両親が聞こえる両親とか。両親は聞こえるけども、生まれた子はたまたま聞こえなかった子供とか、逆の場合もあるし。
(続きます)
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