8.ろうの方を取り巻く環境


―――高校のときの友達が、片耳しか聞こえなくて、両親が全く聞こえない。 よく僕らしゃべってる話をスルーするんですよね、その友達は。ずっと片方聞こえないから、聞こえづらいねんなというふうに今まで思ってたけど、ひょっとしたらちょっと理解できてない部分がひょっとすればあるかもって、今聞いて思いました。

 

K先生:きっとそうやったと思います。もうスルーしないとしょうがない。聞き返せないときがあった。

 

―――すごい衝撃です。そうやったんやという。

 

K先生:今考えたらね。

 

―――はい、今考えたら。

 

K先生:両親にも聞けないし。

 

―――はい。

 

K先生:聞いても答えれないかもしれない。わからないですけどね、そのご両親の教育によってね。受けてきた教育とかも、育った環境によって物すごい差がありますね、聞こえない人というのは。

 

―――2歳で耳がもう全く聞こえなくなった人って、割とよく聞くじゃないですか。風疹であったりとか、熱とか。

 

K先生:いろいろね。はしかとかね。

 

―――はしかとか。今はそんなに2歳でという。

 

K先生:今は私もあんまり詳しいこと分からないですけど、何とかストレプトマイシン、熱下げるための。あの薬が原因という方が、70代ぐらいの人がすごく多いですね。

 

―――そう。すごいよく、プロフィールとか見ると。

 

K先生:生まれたときは聞こえてたのに、その注射が原因で聞こえなくなった。

 

―――それがストレプトマイシンって、何でしたか。

 

K先生:抗生物質かな。

 

―――割とよく聞きますね。

 

K先生:そうですね。3歳まで聞こえてたら、言葉って覚えてるんですって。

 

―――なるほど。

 

K先生:3歳まで自然に入ってくる言葉。私の先生の尊敬してたおじいちゃんの先生、もう亡くなったんですけど、その人も3歳までは聞こえてた。だから、話せるんです。

 

―――3歳ですか。

 

K先生:3歳。だから。

 

―――じゃ、ずっと聞こえないで来て、人工内耳とかで聞こえるようになっても、獲得できない言語があるということですか。

 

K先生:人工内耳、ほとんどの子は今してます。小学校、聴覚特別支援学校というんですけどね、聞こえないろう学校というのは、物すごい今は人工内耳にしてる子供がほとんどですって。でも、やっぱりそれも訓練しないと聞こえるようにはならないんですって。ただ機械を入れて、あしたから聞こえるか言ったら、全然そんなことないと言ってますね。

 

―――生まれて、割と今、赤ちゃん、ゼロ歳から人工内耳しますよね。それでもやっぱりかなり差があるんですか。

 

K先生:差があるみたいです。でも、やっぱり親はちょっとでも聞こえるようになってほしいから、人工内耳の手術を受けさせるというのが、すごく多いらしいですね。

 

―――本人はそれが普通と思ってるし、周りはどこまで聞こえてるかとか、わかんないですよね。

 

K先生:努力するんじゃないんですか、すごくそれは。

 

―――人間の聞こえる可聴域って、何か20ヘルツから大体2万ヘルツ。

 

K先生:ヘルツのほうね、それは。

 

―――はい。それの機械というのは、やっぱりその範囲内で作られてるものなんですか。

 

K先生:ヘルツよりもデジベルで。

 

―――音量のほうか。

 

K先生:そうそう。高さとか大きさとか違いますよね。強さ、高さとかね。

 

―――はい。

 

K先生:ヘルツは2万ヘルツで聞こえるのがあるけど、聴覚障害の場合はデシベルでいくんです。100デシベル、最高の音が聞こえない人は一番重い2級なんですね。それは聴覚障害の2級です。でも、持ってる手帳は1級なんです。1級というのは一番重い。聞こえないがゆえにしゃべれない。言いやすい音、子音とか母音とかありますでしょう。あれがちゃんと明瞭に発音できない人は、聴覚と言語障害とダブルんですよ。

 

―――そういうことなんですね。

 

K先生:それで、1級の一番重い手帳を習得して。だから、年金に関わってきますからね。障害年金、100万ぐらいかな。1級で1年間で100万ぐらいもらえる。月にしたら9万、8万かな。だから、みんな1級持ってるんですね。でも、聴覚障害は2級が最重度になる。しゃべれないのと重なって1級もらえるという。手帳ですけどね。あんまりヘルツのことは言わないんです。デシベルで言ってしまうんです。

 

―――なるほど。何か結局、人間の聞こえる範囲って、上が2万ヘルツで。

 

K先生:2万ですね。領域があるんですね。

 

―――そう、領域がね。でも、実際、ほんとは聞こえてない部分、3万ヘルツ、4万ヘルツという部分も、何らか意識は知覚してないけど、何か影響してるんじゃないかという話があるんですよね。レコードとかCDになったときに、やっぱり2万ヘルツで再生するために、44.1キロヘルツで録音するという。何か録音して再生するときに半分になっちゃうみたいなんで、必ず倍で録音するというのがあって、それで2万ヘルツの倍で4万4,000ぐらいで取るんですけども。それで何か音きれいに、雑音もクリアになって、人間が聞こえる範囲はカバーしてるから、音は問題ないはずやのに、結構みんな、何か冷たい音になったとか、音が遠くなったとか言う人が。

 

K先生:そういう聞こえ方になるんですね。

 

―――そうなんです。だから、2万ヘルツ超えてる部分も、実は人間、感じ取れる。

 

K先生:あるんかもしれないですね。

 

―――はい。それも言語の何かあれにも関係するのかなとか。人間も多分、発してる言葉、その範囲内で、コウモリやったらもっと。

 

K先生:何か聞こえる音が違うんですもんね、動物によってね。

 

―――はい、イルカとかも。

 

K先生:イルカね。ありましたね。本あったね、何とかヘルツの。

 

―――それも言語獲得能力に何か、ひょっとしたら関係あるのかもというのは感じましたね。

 

K先生:あるんかもしれないですね。

 

―――今、感じましたね。

 

K先生:そうですね。

 

―――そこを人工内耳とかでやると、全然カットして。自然の音じゃないから。

 

K先生:ないもんね。

 

―――そういうところもなかなか獲得できないというのも、それだけじゃないにしても、何かひょっとしたらあるんちゃうかな。

 

K先生:あるんかもしれないですね。

 

―――思ったより難しいという、重い問題というのは、何かそんな気がしますね。

 

K先生:ありますね。

 

(続きます)

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